結局、LUNA SEAの『LUV』はどうだったのか
毎度毎度、「LUNA SEAがアルバムをリリースする」っていうイベントは特別なんです。
それは、彼らと出会って20年以上たった今でも変わりません。
今回は自分の気持ちを把握するためにも、
2017.12.20にリリースされた『LUV』に関する20年来のSLAVEからの所感をまとめてみたいと思います。
ソングライティングへの違和感
前情報でJの原曲が少ないっていう話は聞いていて、
「マジかよ?そりゃすげぇな」とか思っていたわけです。
JといえばLUNA SEAきってのメロディーメーカーであり、数々のヒットソングの原曲を手がけてきたのですから。
もちろん、誰が原曲かなんて、どうでもいい話ではあるんですけどね。
今回の『LUV』を聴いて最初に感じたのは、「ソングライティングへの違和感」です。
すごい雑な言い方しちゃうと「いい曲がない」。
特にショックだったのが、SUGIZO・INORAN・Jという、LUNA SEAのソングライティングを支えてきた3人の曲が、軒並みピンと来ないこと。
反対に、RYUICHI原曲とされている曲(「piece of a broken heart」「So Sad」)がいい。
河村隆一の初期なんて、C→G→Am→Fみたいな素人みたいな曲しかなかったんですよ?
不思議でなりません。
メインソングライターの3人は、もしかしたら少し先の次元に行っちゃったのかなとも思います。
アレンジの「煮詰めてない」感
もちろん曲が微妙なことなんてこれまでもあったんですけど、
そんな曲でもLUNA SEAの歴史に脈々と流れる構築美的なアレンジで料理することにより、「圧倒的LUNA SEA感」を獲得していたんです。
僕はむしろ、なんか変な曲をアレンジで持ち上げるLUNA SEAらしさが好きでした。
アレンジもソングライティングの内というか。
『LUV』にはそれがないんだな……。
どの曲も引っかからず終わっちゃう。
これってぶっちゃけ
時間なかったんじゃねぇの?
って勘ぐってるんですけど。
『A WILL』はわざわざ合宿したということで、バッチリだったんですけどねぇ。
音がキレイ(悪い意味で)
今回一番問題を感じてるのは、サウンドプロダクションなんです。
キレイで聞きやすくて……つまんない。
特にドラムサウンドに、これまでにあったような「すぐそこに真矢がいるような生々しさ」「皮がビリビリと振動しているような感覚」がなくなってしまっている。
「なんかおかしい」と思ってブックレットを見てみると、
やっぱりレコーディングエンジニアさんが変わってるみたい。
比留間 整さんという方が、確か『MOTHER』以降エンジニアをやっていて、僕はその人の録る音が非常に好きだったんです、リアルで。
BUCK-TICKの『狂った太陽』とかも録ってる人なんですけど。
どういう事情かわかりませんし、もちろん意図があったのかもしれませんが、
僕は今回も比留間さんを起用しなかったのは、完全に悪手だったんじゃないかな、と思います。
試しに『STYLE』聴いてみたら、めちゃめちゃパンチある音でビビった、20年前のアルバムなのに。
MVPはRYUICHI
個人的に今回のMVPはRYUICHIだと思っています。
上述したように曲もよかったし、
歌のテイクもよければ、ミックスもよかった。
歌詞もどんどん洗練されている。
全体的に不満だらけの今作において、彼の存在には希望を感じます。
かつて「終幕」のトリガーを引いたのは事実上彼だと思うのですが、今LUNA SEAを引っ張ってるのはRYUICHIじゃないかな。
インストはマジでいらねぇ
ブーブー文句いいながら、「なんとか理解できないだろうか」と思ってずっと聴いてます。
いままでだって、頑張って理解できたことはあったし。
けど、けどね……
あのインスト(「Ride the Beat, Ride the Dream」)はマジでいらねぇんじゃないかな?
なんなのかな、あの下手くそなEDMみたいの。
真矢のドラムって、本当バケツ叩いてるみたいで心地いいとは思うんだけど、やっぱりバンドサウンドでこそ輝くんじゃないかな。
少なくとも、あのオケに合わせて叩くうえでは、彼にトラックへの理解が足りないと思う。
僕、INORANのソロはものすごいダサいと思っていて。
一方で「gravity」だとか、前作だと「MARIA」や「absorb」とか、すごくいい曲も書くんですよ。
もう、まったく彼のセンスがわからない。
で、このインストの次の曲(「Thousand Years」)が、INORANの曲でして……、
僕が今回のアルバムで一番好きな曲なんですよねw
もうさっぱりわかりません。
普遍的なタイトルなのに問題作
残念ながら、今のところはLUNA SEAではじめての「失敗作」として評価せざるを得ません。
普遍的なタイトルなのにすごい問題作をぶち込んできたもんだと思います。
「LUNA SEAはこれからどうなってしまうんだろう?」なんて、不安を抱えながら年末のさいたまスーパーアリーナに参加しました。
lunaticismy2ndname.hatenablog.com
仕上がりについて賛否両論あることは、彼らも知っているようです。
ただ、優秀な作品を作るより、違うステージに行きたかったということなのでしょうか。
少なくとも、そういったメッセージをライブで聴けてよかったと思います。
彼ら「次に行く」と意思表示してくれるのなら、ファンがついていくかどうかだけなのですから。
「World Left Behind」というツアータイトルも、今の姿勢を反映してますよね。
思えば、メッセージ性の強いツアータイトルがついたのも久々。
僕は、「昔のほうがよかった」とか言っちゃうバンドのファンに対して、「じゃあ、昔のアルバム聴いてりゃいいんじゃないの」って思っちゃうタイプなんです。
まさか、自分がその立場になるとは思わなかったけどw
でも、そう考えると今回の『LUV』は、僕が望んだ作品と言えるのかな。
普通にいいアルバムが聴ければ、それで満足だったんだろうか。
もしかすると、「そうじゃないだろ」って彼らのほうからメッセージしてくれてるのかもしれないね。
第一、音源なんてリリースしなくても年2回ぐらいライブやってりゃみんな満足するクラスのバンドが、ちゃんと前に進もうとして問題作を投下してくれるのだから、
その姿勢は評価したいですね。
***
というわけで、今回の『LUV』は20年来のSLAVEにとって明らかに異質でした。
タイトルには反しますが、僕はまだ答えを出せずにいます。
もちろん、答えは今作を聴いたすべての人の数だけあるべきです。
まだ聴いたことがない方がいれば、聴いてみてください。
願わくば、LUNA SEAの音楽をどうしようもなく本気で聴いている人間がいることが、彼ら自信に伝わりますように。